〜身近なおすすめスポット 15 大磯〜
静かで落ち着きのある街の印象である大磯ですが、駅前は予想外に人通りが多いです。駅前でとても目立ったお店が“ほっこり桜cafe”と“地場屋ほっこり”。この2軒とコンビニのみしかなかったように思います。
地元の野菜や多彩な食品を手広く販売するとともに、軽い食事もできるようです。この先に、飲食店があるのかどうかもわからなかったので、ここで食事をとることにしました。
注文したのはトーストセット(サラダとミニキッシュ付き)で、ドリンクは色々な飲み物をチョイスできるようになっているので、地元で作られたオレンジジュースにしました(写真:メニューにチーズケーキがあったが、今回は注文はしなかった)。
お腹いっぱいになったので、店内をゆっくりとひと通り見学した後に、まずは島崎藤村の菩提寺、地福寺へ。その途中では、旧木下家別邸の洋館が目に留まります。海岸沿いでもあるので、潮風と自然豊かなこの地にかつては多くの別荘がありました。かなり先には旧吉田茂邸もあります。現在の旧木下家別邸は平成24年に国有形文化財に指定されていました。
別邸の右脇をさら下ると、5分ほどで地福寺に到着。境内は多くの梅の木が植えられていて、小ぢんまりした寺です。その本堂に向かって左側に静子夫人と並んで墓はありました(写真)。二人ともとてもシンプルな墓石で、広めの墓の敷地に四角柱のような長い石がスッと立っています。墓のイメージよりも近代的な記念碑やモニュメントのようでした。深い感慨にひたりながら、墓前で手を合わせ一礼させていただきました。
国道1号線を出ると、なんだか避暑地の様子がよりはっきりとしてきました。昔ながらの食料品店、お饅頭屋などが目に入ってきます。
そして、さざれ石交差点前で視界に入ってきたのは“井上蒲鉾店”。店舗は新しくて清潔感が漂い、若い店員さんが慣れないながらも笑顔に溢れていました。普通に蒲鉾を買おうとしたら、今日は売り切れで、あとは薩摩揚げしかないと言います。10個セットで900円とのことですが、今は妻と二人暮らしだから食べきれないと思ったので、バラで6個購入しました。家に帰って焼いたものがその写真です。何もつけなくても、従来の練物の味がしっかりとしてめちゃくちゃ美味。もちろん生姜醤油で食べれば抜群です。
さて、お店を出て更に1号線を西に向かってみます。陽射しが強い季節で、日陰がそれほどない中で意識がもうろうとしてきた時に見えて来たのが、「湘南発祥の地」の石碑と「鴫立庵」です。何でも現地の案内板によると、1664年に小田原の崇雪がこの地に鴫立沢の標石を建てた時に「著盡湘南清絶地(ちょじんしょうなんせいぜつち)と記されたことが由来となっているとのこと。また、1695年に大淀三千風が第一世庵主となり、京都の落柿舎、滋賀の無名庵とともに日本三大俳諧道場と言われていたそうです。(入場は有料)。
そして、さらに西へ。1号線を渡り、「旧島崎藤村邸」の看板が目につき、すぐに案内のとおり横道を右に入ります。案内どおりに行くと、3分ほどで到着しました。
受付の方がいたので「大人二人」と告げると、「どうぞそのままお入りください。邸内には入れませんが、庭から開放したお部屋をご覧いただけます」
まさか入場が無料だとは考えもしませんでした。ありがたいと思いながら、庭へ向かおうとすると、
「こちらをよろしければどうぞ」
といただいたのが、ここのパンフレットと写真の団扇でした。
「涼しい風だね...」
今の季節にホッとできるひと言。
藤村は晩年の約2年半を神奈川県の大磯の質素な家で過ごしました。「東方の門」を執筆中の昭和18年8月22日、このひと言を言い残し、そのまま亡くなったと言われています。亡くなる直前の最後の文人の言葉に、深い味わいを感じます。この話をパンフレットから読んで、しばらく感慨にふけっていました。
https://www.hokkori-shonan.com/cafe/
(ほっこり桜Cafe)
(井上蒲鉾店)
http://www.town.oiso.kanagawa.jp/isotabi/meguru/pagedate/14423.html
(2023.8.31)